特定活動46号ビザが創設された経緯

2019年5月、特定活動46号というビザができ、一定の条件を満たした外国人が介護施設で介護職に従事することが可能となりました。

これまで、日本の大学を卒業し、日本語能力も高い外国人留学生が、介護施設で、日本語の能力を活かしながら、介護の仕事をしたいと希望を出したとしても、あてはまるビザが存在しないという状況でした。

日本において、大卒の外国人留学生が、一般企業に就職するとき、取得されているビザは、「技術・人文知識・国際業務」というビザです。このビザに該当する職業は、学術的専門性を持つホワイトカラー的な業務でなくてはいけないとされています。

「介護」の仕事は、介護福祉士という国家資格が存在するように、その分野において、高度の専門性を持ち、ある意味では、他のすべての仕事と比較しても、高いコミュニケーションと日本語能力を必要する仕事であると言えます。

しかし、特定活動46号告示がなされる前まで、出入国在留管理局の判断では、一般的な「介護」の仕事には、「技術・人文知識・国際業務の該当性はない」という判断がなされていました。

日本の大学を卒業した外国人留学生が、介護施設に就職口を求めたとき、一般的な会社にもある外国人の雇用管理のための採用担当、通訳といった分野の専門性のある仕事をすることはできますが、「利用者様と密なコミュニケーションをとりながら行うことが必要な食事介助、入浴介助などの専門的な介護の仕事」、あるいは、「高い日本語能力を活かし、介護の現場において、利用者様とまだ日本語が充分とはいえない介護の技能実習生や介護の専門学校卒の人材との橋渡しといった通訳的な仕事」をすることはみとめられませんでした。

例外的に、日本の福祉系大学を卒業した外国人が、介護施設において、要介護者の運動指導や健康管理等を担当しているケース、日本のビジネス系専門学校を卒業した外国人が、経費老人ホームの生活指導員として採用されたケースなど、「技術・人文知識・国際業務」があると判断されることはありましたが、件数としてはわずかです。

こうした現場の実情が、入管の制度と相容れないという現象は、介護に限らず、飲食業、宿泊業、製造業など、他の業界の現場でも多くみられ、人手不足が深刻な産業界からの矛盾の解消を望む声が強まる中、特定活動46号の告示がなされました。

告示の制定は、法律改正と違って、国会の審議を必要としないため、手続き的には、法律の改正より、簡単に実現することができます。

ちょうど、特定技能の制度の創設と相まって、人手不足が深刻な業界に対して、大学卒の高度人材である外国人の参入を容易にするための告示と言えるかもしれません。

特定活動46号の導入にあたって示されたガイドライン(留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン)によりば、介護については、以下の具体例が示されています。

 

後述するように、この特定活動46号の要件が、日本の大学、大学院卒の要件に加えて、高い日本語能力(N1以上)というのが必須であることから、技能実習、特定技能外国人チームの管理者的役割が期待されています。

また、日本の福祉系大学、運動指導員が可能な体育大学、心理学やコミュニケーションなど学ぶ教育系学部の大学など、様々な外国人留学生は、介護の分野に参入が可能となり、仕事の幅が予想されます。

大卒の外国人留学生が、介護の仕事に就職するという時代が、介護の深刻な人手不足の解消に役立ってくれるかもれません。

※なお、介護分野における、技能実習生や特定技能外国人の日本語能力は、N4からN3程度、介護養成所出身の「介護」の在留資格を持つ外国人の養成校はN2以上となっています。

 

 

特定活動46号の要件

  • 日本の大学を卒業・大学院を修了していること
  • 日本語能力試験N1またはBJTテスト480点以上であること
  • 日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務であること
  • 大学で学んだことを活かせる仕事であること
  • 契約形態は、フルタイムで働くこと、
  • 日本人と同等以上の報酬額で雇用されること

 

以下、詳しく解説していきます。

日本の大学を卒業・大学院を修了していること

※短期大学及び専修学校 の卒業並びに外国の大学の卒業及び大学院の修了は対象になりません。日本の大学を卒業後、一度、帰国していても構いません。

 

日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有すること

大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した方についても可。

なお,外国の大学・大学院において日本語を専攻した方についても可ですが、この場合であっても,併せて日本の大学・大学院 を卒業・修了している必要があります。

 

「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」であること

「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とは,単に雇用主等からの作業指示を理解し,自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず,「通訳、翻訳業務」のように、双方向のコミュニケーションを要する業務であることを意味します。

 

大学で学んだ知識が必要となるような業務であること

学問的知識に基づく業務である必要で、いわゆる「単純業務」ではいけないということです。介護の分野においては、施設内の掃除や洗濯ではなく、利用者様等の密なコミュニケーションをとりつつ、専門性のある介護の仕事をする必要があります。

 

フルタイムで働くこと

フルタイムの職員としての稼働に限られ,短時間のパートタイムやアルバイトは対象にならず、派遣形態も認められていません

※特定活動には、勤務先が限定され、「指定書」として旅券に貼付されます。転職等で活動先の機関が変更となった場合は指定される活動が変わるため,在留資格変更許可申請が必要です。

 

日本人と同等額以上の報酬を受けること

地域や個々の企業の賃金 体系を基礎に,同種の業務に従事する日本人と同等額以上であることが求められます。特定活動46号ビザは、日本人大卒者・院卒者の賃金を参考とされます。

大学卒業後、すぐに就職して初任給が、介護の実務経験がない場合、技能実習生、特定技能、介護の他の外国人より短いのに、給与が高いという現象も起こり得ます。

高い日本語能力を持って、外国人の通訳として、リーダー的な管理業務を与えるなどして、外国人同士の在留資格の違いよる仕事の差異を目に見える形でわかるようにするなどの配慮も必要となります。

 

特定活動46号ビザの申請にあたり留意する点

家族の帯同について

家族の帯同は認められます。特定活動46号の扶養を受ける配偶者又は子については「特定活動47号」(本邦大学卒業者の配偶者等)の在留資格となり,日常的な活動が認められます。「家族滞在」にはならないことで注意が必要です。

 

在留期間について

在留期間は,5年,3年,1年,6月又は3月のいずれかの期間が決定されます

原則として,「留学」の在留資格からの変更許可時,及び初回の在留期間更新許可時に決定される在留期間は,「1年」となります。

 

転職時の注意点

特定活動46号ビザは、ほとんどの分野の仕事で取得できるビザとなりますので、転職活動はそれほど苦労しないことが多いです。転職が決まったら、速やかに、在留資格変更申請を行ってください。この点が、一般的な留学生の就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」とは異なっています。なお、退職してから3ヶ月以上無職の状態でいると、在留資格取消対象となりますので、注意してください。すぐに再就職先が決まるからと安心して、母国に帰ってしまった場合、再入国できないこともあります。

他方、単に、例えば同一法人施設内の異動や配置換え等については,在留資格変更手続は不要です。介護施設内の仕事に関して、日本人と同等の扱いとなるので、介護分野に特有の、人員配置基準※に含めることも、夜勤をさせることも問題ありません。

※人員配置基準とは、介護保険法により定められた介護付き有料老人ホームなどには入居定員に対する必要な職員配置数の基準のこと

例 通所介護の場合 利用者が15人以下の場合は、1人以上の介護職員を配置すること

 

特定活動46号ビザの必要書類

本人に関する書類

在留資格変更許可申請書

証明写真(縦4cm×横3cm)

パスポート

在留カード

卒業証書(写し)又は卒業証明書

日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上の成績証明書(写し)。外国の大学・大学院で「日本語」を専攻し学位を取得した場合は、卒業・修了証明書(写し)

会社に関する書類

直近年度の決算書類(損益計算書、貸借対照表のページ)

直近年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表

労働条件通知書

会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、主要取引先、取引実績等が記載されたもの)、もしくは勤務先のホームページの写し(事業概要が確認できるページ)

登記事項証明書

職務内容に関する詳細説明書

 

特定活動46号ビザ更新時の注意点

素行が不良でないことが更新時に考慮されますので、資格外活動許可の条件に違反し、恒常的に1週に28時間を超えてアルバイトに従事していた場合などは、審査に不利に働く可能性があります。

 


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