介護ビザを取るための3つのルート
介護ビザを取るためには、原則、介護福祉士の国家試験に合格していることが条件となります。外国人が介護福祉士の国家試験に合格するためには、以下の3つのルートがあります。
介護福祉士養成ルート
外国人留学生として、在留資格「留学」で入国し、最低2年間、介護福祉士養成施設で学びます。卒業後、介護福祉士資格を取得した場合、在留資格「介護」に変更することができ、介護福祉士 として介護業務に従事することができるようになります。これは、「養成施設ルート(専門学校等)」と呼ばれます。
なお、介護福祉士国家試験に合格した後、介護福祉士登録証が交付されるまでの間にタイムラグがありますが、この間についても、介護施設等で就労することができます。
介護を学ぶ外国人留学生の数は大幅に増加しています。(2013~2018年の5年間で20倍)。外国人留学生に、介護施設での就職を希望する理由を聞いたところ、下記のような回答が多くありました。
・日本と同じような介護施設は母国に存在しないため、日本の介護技術を持ち帰りたい
・介護業界は景気や天候に左右されずに安定収入を得られる。
・不景気になっても外国人だからという理由で解雇されにくい。
外国人にとっては、安定雇用という点が人気のようです。今後も介護分野における留学生の数は、ますます増加すると思われます。
実務経験ルート
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、デイサービス、病院などで、実際に介護士として働いた経験が3年以上(実働日が540日以上)あることに加え、実務者研修を修了していれば、介護福祉士の国家試験を受けることができます。
なお、正社員だけでなく、アルバイトやパートとして働いた経験も実務経験として認められます。
外国人の場合、日本語学校や、専門学校(福祉系以外の学校)で学びながら、介護施設でアルバイトをすれば、介護福祉士の受験資格を満たすことができます。また、家族滞在ビザの外国人が介護施設で実務経験を3年以上積むこともできます。
介護福祉系高等学校卒業ルート
福祉科や介護福祉コースなどがある高校や特例高校を卒業すれば、介護福祉士の受験資格を満たすことができます。
なお、特例高等学校の場合、卒業後に9カ月以上の実務経験を積んでからでないと国家試験を受けることができません。
また、特例高等学校の卒業者は、受験申し込み時に実技試験の有無を選択できます。実技試験を受けない場合、介護技術講習の受講が必要となります。
養成施設ルート(専門学校等)で、介護ビザを取得する
資格取得までの一般的な流れは次のようになります。
- 日本語学校の留学生として入国、留学ビザを取得。
- 介護福祉養成施設(介護福祉系専門学校等)に進学、2年以上学ぶ
- 介護福祉士の国家資格取得
- 介護のビザ取得
1~3の期間は「留学」の在留資格となります。この間、介護福祉養成施設に通い、介護福祉士の国家資格の受験資格を得ることができます。各介護福祉士養成校の規則によりますが、養成校に通学している時から、アルバイトとして雇用することもできます。このときは、「留学」ビザの包括的資格外活動の範囲、つまり週につき28時間以内での労働が認められます。夏休みや春休みなど学則で定められた長期休業期間中は、1日8時間(1週で40時間以内)まで働けます
基本的に、就労制限はなく、時間の範囲であればどのような介護サービスも行わせることができます。留学生の中には、高額な介護福祉養成施設の授業料を払うために、週28時間という時間制限を守らず、アルバイトをすることがあります。それは、不法就労となりますので、卒業後、日本にいることができなくなることもあり、雇用者側である介護施設も注意が必要となります。
そして、介護福祉士に合格し、国家資格を取得した後は、在留資格を「留学」から「介護」へと変更でき、介護福祉士として日本の介護施設で働けるようになります。
介護養成校の留学生の日本語能力
介護養成校の入学要件の目安は、N2程度以上です。他の在留資格(技能実習、特定技能1号)の場合が、N4、N3レベルが多いことを考えると、高いレベルの語学力が期待できます。介護の在留資格をとれば、人員配置基準※は、雇用してすぐに配置基準に含めることが可能です。また、夜勤をさせることも当然できます。
※人員配置基準とは(介護保険法により定められた介護付き有料老人ホームなどには入居定員に対する必要な職員配置数の基準のこと)
参考サイト 介護留学生受け入れ校リスト
https://www.kaigo-ryugaku-support.net/
介護福祉士を目指す留学生のための相談支援センター
介護を学ぶ学生のための都道府県奨学金制度
介護養成施設の授業料、日本の生活費もあり、資金が大変な留学生のために、奨学金制度があります。修学資金等貸付制度は、都道府県により取り扱いが異なっていますが、随時受け付けているところもありあります。都道府県で行っているもの以外にも養成校が独自に扱っている奨学金等もあります。
留学ビザから特定活動ビザへの変更
令和3年度までに介護福祉士養成施設を卒業する留学生が、介護福祉士の国家試験に合格することなく介護福祉士となる資格を取得するためには,介護福祉士養成施設を卒業した年度の翌年度の4月1日から5年間継続して、介護等の業務に従事する必要があります。
介護福祉士養成施設を卒業した留学生が介護福祉士の登録を受けるまでの間、タイムラグがありますので、その間に介護の業務に従事する場合、「特定活動」への在留資格の変更を行う必要があります。「留学」から「特定活動」への変更後、4月1日時点においてフルタイムで介護等の業務に従事することが可能となります。
介護ビザの要件
1.介護福祉士(国家資格)の資格を持っていること
例外あり 後述の経過措置参照
2.日本の介護施設との雇用契約があること
介護の在留資格でできる業務は、「本邦の公私の機関との契約」に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動です。
介護対象者の範囲も老人介護に限らず行うことができますが,要介護者本人や,その家族との契約に基づいて行う活動は,ここにいう「本邦の公私の機関との契約」には該当しないことは注意が必要です。
3.職務内容が「介護」もしくは「介護の指導」であること
介護福祉士の資格を有する者が、本邦の病院,介護施設等で入浴,食事の介助等の 介護業務全般を行う活動が該当し、ケアプランの作成等も含まれます。
在留資格「介護」においては,活動場所は必ずしも介護施設等に限定されず,訪問介護も可能です。これは、技能実習介護や特定技能1号介護の在留資格を持つ外国人は、訪問介護を認められていないことから、優位な点となります
4.日本人が同じ仕事に従事した場合と同等額以上の報酬を受け取ること
日本人介護士と同じ給与を支払う必要があります。国籍によって給与体系に差異を設けることは禁止されていませんが、外国人介護士同士のトラブルを避けるためにも、給与水準は統一しておいたほうがよいでしょう。
なお、在留資格「介護」を持っていれば、本人が望む限り、繰り返し更新できますので、永続的に働くことができます。家族(配偶者・子ども)の帯同が可能となります。ちなみに、技能実習(介護)、特定技能第1号(介護)は、家族の帯同はみとめられていません。また、技能実習では制限のある、同じ法人内での異動や介護職種での転職も可能です。
介護ビザに関する経過措置
介護ビザは新設されたばかりであり、国家試験である介護福祉士の取得は一番大事な義務です。しかし、平成33年度(合格しなかった場合として、経過措置が存在します。
平成29年度から平成33年度(平成29年4月1日から平成34年3月31日)までに、介護福祉士養成施設を卒業した方は介護福祉士試験に合格しなくても(不合格又は受験しなかった方)、(公財)社会福祉振興・試験センターに登録申請することにより、5年間の有効期限の介護福祉士の登録を受けることができます。
経過措置による資格登録有効期限は養成施設卒業年度の翌年度の4月1日から起算して5年を経過する日までです。国家試験に不合格でも、5年の期限付き介護福祉士の資格を取得でき、介護ビザも取得可能となります。そのまま、介護の仕事を5年続ければ、「介護福祉士」の資格を取得できるということです。入管は、介護福祉試験に合格していない者、この経過措置中のもの(この間の在留資格は特定活動)には、1年の期間の「介護」与える運用になっています。
平成34年(2022年)以降は、経過措置は終了します。つまり単に介護福祉士養成施設を卒業しただけでは介護福祉士の資格は取ることができないという運用に代わります。
介護ビザ 申請に必要な書類
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート及び在留カード
- 介護福祉士登録証の写し(経過措置を利用する場合は不要)
- 労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき,労働者に交付される労働条件を明示する文書
- 勤務先の会社案内(沿革,役員,組織,事業内容等が詳細に記載された案内書でもOK)
- 介護福祉養成施設の卒業証明書(養成施設ルートの場合)
- 職務内容説明書(適宜)