全てのフィリピン人に当てはまるわけではありませんが、その人の性格や考え方というのは、生まれ育った環境にもある程度影響されています。県民性という言葉も、こうした根拠に基づいて生まれました。

以下、フィリピン人を採用する上で知っておいたほうがよいこと、配慮すべき点などをまとめました。

 

フィリピン共和国の基礎知識

フィリピン共和国のことについて、少しでも知っておくと、面接や採用後の育成に役立ちます。また、フィリピン人とのコミュニケーションもスムーズになります。

まずは、フィリピン共和国の基礎データから見ていきましょう。

人口は、約1億831万人、40年前と比較して、2倍強の人口数であり、急速な増加傾向が続いています。フィリピン国民の平均年齢は23.5歳であり、国民の年齢別構成は、25歳未満が52.6%であり、若年人口比率が圧倒的に高いです。

首都は、マニラですが、最大の都市はケソンです。マニラやセブなどの大都市圏には巨大なショッピングモール、商業施設などが乱立しています。フィリピンは熱帯地方の国であるため、日本の気候に慣れるまで苦労するといわれます。服装や雪道の歩き方、暖房器具の取り扱いなど、必要な生活上の便宜は図るようにすることが大切です。

公用語は、フィリピノ語および英語。宗教は、ASEAN唯一のキリスト教国。国民の83%がカトリックであり、イスラム教5%。(ただしミンダナオではイスラム教徒が人口の 2 割以上)。信教に応じて十分配慮した上で接することが必要です。また、受入れ施設において、近くにある教会の情報を提供することも大切です。

 

世界最大の出稼ぎ国フィリピン

フィリピンは、世界最大の「労働力輸出国」といわれており、国民の10人に1人にあたる1,000万人が海外に居住して仕事をし、フィリピンの家族への送金を行っています。

2020人6月末、日本に在留するフィリピン人は、277,409人、中国、韓国、ベトナムにつぐ第4位です。永住者が、130,956人と約半数います。フィリピン人介護士の中には、永住者や日本人配偶者等の在留資格を持つ者も多いです。

フィリピンには、日本の約3倍にあたる約3800校以上の職業訓練学校が存在しており、仕事の即戦力的となる教育カリキュラムが整備されています。看護師や介護士の育成するための教育機関も沢山あり、「Caregiving NCⅡ」というTESDA(Technical Education and Skills Development Authority労働雇用省技術教育技能開発庁)が認定するフィリピン人介護士の国家資格もあります。フィリピン政府は、古くから、アメリカを始めとした英語圏に対する必要人材を供給する政策をとっており、現在では、英語圏にとどまらずに、世界中で、専門知識を備えたフィリピン人介護士の重要は高まっています。こういった世界各国赴く、フィリピン人海外労働者のために、DOLE(フィリピン労働雇用省)、POEA(フィリピン海外雇用庁)などの機関が設けられ、フィリピン人労働者の保護政策が徹底されており、いわゆる悪質なブローカーを排除する施策がとられています。

近年、EPA特定活動(ベトナム、インドネシア)、技能実習と多くの国の外国人が、日本で介護の仕事を学び、就職しようとしていますが、自国において、欧米の介護技術に影響を受けた「介護」教育が、これまで整備されているという点については、フィリピンは、間違いなく、ナンバーワンと言えます。もともと、ホスピタリティが高く、介護向きの国民性も相まって、優秀な介護人材の供給国と言えると思います。

実際、介護施設でのフィリピン人介護士の評価はとても高いものであります。

まだ、英語での会話が可能なことは、雇いれる側の日本人や介護施設の利用者にとって、有効なコミュニケーションの一つとなっています。「認知症のお年寄りが、フィリピン人介護士と英会話を楽しんでいる」という報告もあります。

 

日本にいるフィリピン介護士

日本におけるフィリピン人の介護士は、身分系、特定活動(EPA)、介護、技能実習、特定技能の在留資格がみられます。

フィリピン経済連携協定(EPA)に基づき、2009年からフィリピン人介護士の受け入れが始まりました。公益社団法人・国際厚生事業団(JICWELS)が2017年に発表した「外国人介護士の現状~EPAによる受入れを中心として~」では、介護分野の外国人介護職員は約3,500人で、そのうち41.4%がフィリピン人という結果でした。

 

フィリピン人の介護士が日本で働くこと希望する理由

まず、収入の高さです。フィリピン人労働者の平均月収は、2万5千円~3万円程度と言われています。一方、日本の介護職員(勤続1年未満)の給与は、17万~18万円(厚生労働省の「介護人材の確保について」)程度となっています。日本語をマスターしなくてはいけない大変さがあっても、フィリピン人が、日本において、職を得たいと希望する最大の理由と言えます。また、日本が、世界トップの治安の良さにあると思います。物価が高いなどの住みにくい面もありますが、総じて、日本は安全な国であると言えます。

2020年に入り、新型コロナウィルス感染症の影響で、フィリピン国内失業率は、4月に過去最悪の17.7%(フィリピン統計庁(PSA)発表)を記録しました。フィリピン国内では、仕事を見つけることは難しく、若い世代を中心に国外への出稼ぎを望んでいます。

2020年9月現在、海外で行われた、特定技能の介護の技能評価試験の合格者は、フィリピンが最も多く、1400人を超えています。しかし、そのほとんどが、フィリピン国内に足止めされたままとなっており、日本で介護の仕事をつける日を待っています。渡航の規制緩和が行われ次第、特定技能介護外国人として、多くのフィリピン人の来日が期待されます。

 

フィリピン人介護士の国民性、性格、特徴について

ホスピタリティの精神が高い国民性

フィリピン人を一言で表す言葉は、「フィリピーノホスピタリティ」という言葉があります。「人に優しくしよう」という考え方で、初めて会った人でも困っていれば助けの手を差し伸べ、いつも明るく笑顔で接しよう、といったスピリットを持つということだそうです。

最近、経済の発展が著しい言われるフィリピンでも、まだ、国民の80%の貧困層です。貧しい人々が、助け合って生きていこうという気持ちが強く、それは、家族のみならず、赤の他人である、初対面の人にも発揮されます。

昔から、フィリピン人のメイドの欧米での人気は、非常に高いです。最近は、日本でも、「特区家事支援人」という特定活動の在留資格があり、家事支援に従事するフィリピン人の活躍がみられます。フィリピン人は基本的に人の世話をするのが得意な国民と言えるでしょう。もちろん、高齢者に対しても、この優しい性格は発揮されていることはいうまでもありません。

 

高齢者を大切する風習

フィリピンには、10月の第一週、「フィリピン高齢者のための週(Elderly Filipino Week)」というお祭りがあり、フィリピン各地では、様々なイベントが開かれます。

フィリピンには、「高齢の親の世話は、子どもの責任である」という考えが強く、高齢者は家族とともに暮らすことが一般的です。日本のような介護施設というものはないそうです。その代わり、伝統的に若者が高齢者を敬う習慣があり、一人で生活せざる得ないお年寄りに対しては、地域コミュニティ、民間組織、非政府組織(Non-government organization, NGO)などが連携し、ボランティア的に様々な支援を展開されています。

 

明るく陽気な性格

フィリピン人は、陽気な性格で、人に積極的に話かけ、初対面でも仲良くなれるフレンドリーさが魅力です。争いごとを好まず、平和主義でお祭りイベントが大好きです。

人見知りしない性格から、コミュニケーション能力が高いため、チームワークや協調性が強く求められる介護の職場に適していると言えます。日本人と同じく、「空気を読む」ということに理解を示す国民性があるため、外国人特有の自己主張が強すぎることもなく、日本人介護職員の間に、うまく溶け込んでいるケースが多いようです。

ただ、日本人のように、毎日、挨拶をする習慣ない人が多いことから、最初は、礼儀知らずといった印象が持たれる場合もあるようです。この点に限らずですが、お互いに文化の違いを理解し、コミュニケーションをとりながら、徐々に、日本の習慣に慣れていってもらうことが必要です。

 

家族親族・第一主義

フィリピン人は、家族や親戚をとても大切にする国民です。日本人の感覚では考えられないレベルで、何を置いても家族優先です。例えば、家族の誰かが誕生日なら仕事を休むなんてことは当たり前という感じです。それは、海外出稼ぎ労働者であるフィリピン人でも言えることであり、外国行って、一生懸命働いた稼いだお金の殆どは、フィリピンの家族へ仕送りとなっています。そして、家族が幸せになるのであればと本人も幸せを感じるという訳です。

日本で、介護の仕事を行うフィリピン人も、常に、遠く離れたフィリピンの家族のことを考えています。事前に、休暇のタイミングなど話し合うなど、一時帰国や家族と会う時間を守ってあげることは、フィリピン人介護士を雇う上でとても大切なことです。

 

フィリピンタイム 時間にルーズ

フィリピンには、「フィリピンタイム」なるものがあり、時間にとても、ルーズです。細かいところに拘らず、綿密な計画をたてるということも苦手です。

日本の介護施設の多くは、分刻みスケジュールが組まれて、食事時間、入浴時間が決められている場合が多いです。多くの利用者様に、公平に、迅速なサービスを受けていただくために、あまり、「フィリピンタイム」を発動されても問題がある場合があります。

「朝、8時00分から、朝食を開始する」といったように、指示をこまめに出すなどの工夫をして、ここでも、コミュニケーションをとることが大切です。

 

指示する担当者を決め、指示は、細かく、明確に

フィリピンでは仕事の進め方は、上の人間が指示するべきとの考えを持った人が多いようです。また、個人の責任範囲が明確に定められており、それを忠実に遂行することが大切と考えられており、範囲を超えたことは行わないのが一般的です。

ゆえに、業務外の勉強会などを開催する場合は、事前によく趣旨を説明して、納得した上で参加するようにしないと、不当な残業と捉えられることになってしまいます。

 

人前でフィリピン人を叱るのはNG

フィリピン人は、常に自己を取り巻く社会や集団における規範から外れることのないようする道徳といった精神があり、「Hiya(ヒヤ:恥、メンツ)」という言葉があります。

非常にプライドが高く、大勢の中で、自分だけが叱られると言う事態は、フィリピン人にとって恥をかかされたことになり、それをとても嫌悪します。

したがって、職場において、フィリピン人と接して、何か注意や叱る必要がある時は、人前で叱ることは避ける方がよく、個室で、1対1で諭すという配慮が求められます。

 

 フィリピン人労働者を雇いれる時手 フィリピン労働省(POLO)の手続きが必須

 

身分系以外のフィリピン人労働者を雇い入れるときに必要な手続き

日本の受入れ機関(雇い入れ企業)が,フィリピン人労働者を受け入れるためには,フィリピン側の送出手続として,まず受入れ機関が必要書類を駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所(POLO)に提出し,所定の審査を受けた上で,本国の海外雇用庁(POEA)に登録される必要があります。

書類は、すべて英文で作成する必要があるうえ、雇用主である受け入れ機関は、POLOの事務局で、英語で、直接、インタビューを受ける(通訳付き可)必要があります。
また,POLOへの提出書類については,所定の様式にのっとって作成することが必要があります。具体的な必要書類とその様式については,POLOのURLに掲載されていますので,御参照ください。
https://polotokyo.dole.gov.ph/specified-skilled-workers-1-2/

その上で,フィリピン人の方は,POEAから海外雇用許可証(OEC)を取得し,フィリピンを出国時にOECを提示する必要があるとのことです。

 

 

覚えておきたいフィリピノ語

「おはよう」

:Magandang umaga.(マガンダン ウマーガ)

「こんにちは(朝〜夕方)」

:Magandang araw.(マガンダン アラウ)

「こんにちは(正午)」

:Magandang tanghali.(マガンダン タンハーリ)

「こんにちは(夕方)」

:Magandang hapon.(マガンダン ハーポン)

「こんばんは」

:Magandang gabi.(マガンダン ガビ)

「元気ですか?」

:Kumusta ka?(クムスタ カ?)

「大丈夫?」

:Syempre.(シェンプレ)

「ありがとう」

:Salamat Po.(サラマッポ)

「ごめんなさい」

:Pasensya ka na.(パセンシャ カナ)

 


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