介護福祉養成施設の外国人留学生が増えている
日本の介護系専門学校に通う外国人留学生は、年々増えております。
2014年度 17人 5か国
2015年度 94人 9か国
2016年度 257人 15か国
2017年度 591人 16か国
2018年度 1140人 20か国
国別にみると、以下のようになります(介護福祉養成施設留学生)
1位 ベトナム 44.3%
2位 中国 14.9%
3位 ネパール 12.0%
4位 フィリピン 7.9%
5位 インドネシア 5.3%
6位 ミャンマー 3.6%
出典:2018年度「介養協調査」
介護福祉士養成施設の外国人留学生を採用するメリット
日本では、介護施設の人手不足は、深刻な状況となっております。介護分野の「EPA」、「技能実習」、「特定技能」、そして「介護」と様々な在留資格の外国人が、介護施設で働いています。
そんな中で、介護福祉養成施設の外国人留学生は、養成施設入学時より、N2以上の高い日本語能力を有し、「介護福祉士」の国家試験の取得が目標であり、在学中は、アルバイト等で経験を積み、施設に就職してからも直ぐに、即戦力となって働くことができるため、介護施設でも、大いに期待されています。彼らは、最終的に、「介護福祉士」の国家試験の取得を要件に、「介護」の在留資格を得て、永続的に日本で生活することが可能となり、施設においても、日本人と同じように、キャリアアップを期待できます。
海外では「介護」の概念がない国がアジアを中心に多いことから、最初から、介護を仕事にしようと志を持った留学生よりも、まず日本に興味・関心を持ってから、介護の道を志す留学生が多いと言えます。ただ、留学生にとっても、将来的に、日本において、介護の仕事につけば、自分さえ希望すれば、日本で、安定的な給与を得て、家族を読んで、永続的に住むことができるというのが大きな魅力と言えます。
日本語の学習に加え、介護福祉養成施設の授業料から、経済的に大変な状況ではありますが、介護施設側が、将来を見越して、週28時間の介護のアルバイト先を提供したり、公的な支援制度に加えて、介護施設独自の奨学金を出して、養成施設の外国人留学生をサポートして、その勉学をサポートしています。
介護福祉系専門学校の留学生を採用するポイント
ポイントは3つあります。
①奨学金制度を用意する。
②在学中に施設でアルバイトをしてもらう
③卒業後、本採用する。
一つずつ、詳しく解説します。
奨学金等の種類
介護養成校の授業料は、だいたい初年度だけでも、100万円程度が必要となるようです。
また、前述のように、介護福祉士の資格取得を目指す外国人が、直接又は日本語学校を経由して介護福祉士養成施設に留学するケースが当該留学生に対して、留学生の就労予定先の介護施設等が支援する奨学金に係る費用の一部を助成する仕組みが、厚生労働省によってなされています。
奨学金制度のある介護施設を探すのが有力な方法として、以下のサイトがあります。
※(e)独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
「奨学金の制度(貸付金)」
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/index.html
奨学金等の貸与方法
次の3つのパターンが考えられます。
Ⅰ 「①日本語学校の学費に対する奨学金」と「②介護福祉士養成施設の学費に対する奨学金」の両方を受ける場合
→入国時点から介護福祉士養成施設を卒業するまでの全期間の学費に相当
Ⅱ 「②介護福祉士養成施設の学費に対する奨学金」のみを受ける場合
→日本語学校等に留学していた外国人留学生が、②のみを受ける場合
Ⅲ 学費以外に「③その他の生活費等に関する貸付」を受ける場合
奨学金等の貸主、保証人等の関係性について
奨学金 | 貸主 | 保証人 |
①日本語学校の学費に対する奨学金 | 介護施設の施設長等 | 家族等 |
②介護福祉士養成施設の学費に対する奨学金 | 都道府県による(国による介護福祉士修学資金等貸付制度の活用) | 国内に居住する者という要
件があるため、施設長等が 多い(資格取得後、規定年 数の勤務で免除特約付) |
③その他の生活費等に関する貸付(実費(何らか貸す場合)) | 介護施設の施設長等 | 家族等 |
日本語学校の学費に対する奨学金 注意点
労働契約と奨学金等貸与契約とを切り分け、奨学金等については、介護施設と留学生の間「金銭消費貸借契約」を結ぶことが必要です。この場合、貸付の範囲(学費以外の生活費等を含むかどうかなど)とその金額、返済を免除する条件や、条件を満たさない場合の返済額や返済方法については、あらかじめ明文化しておかなければなりません。
一定の勤務を条件として返済を免除する「免除特約付き」としなければならないわけではありませんが、返済方法等については、ルールに則り、合理的なものとして定められておく必要があります。
返済方法
特約付き | Ø 返済免除となる在職期間は「5年間」とされる事例が多くみられる |
特約付き
※免除特約を満 たさない場合 |
Ø 労働基準法第 14 条及び第 16 条を踏まえる
例えば、在職期間に応じて、ⅰ)資格取得前に退職、ⅱ)資格取得後3 年未満で退職、ⅲ)資格取得後3年以上5年未満で退職などの段階に応 じ返還額を減額するとともに、合理的な返済方法(分割での返済を認 める)と返済期間(複数年にわたって返済可能とする)に関する約定を 定めておくことが必要 |
特約なし
※免除特約を満 たさない場合 |
Ø 労働基準法第 14 条及び第 16 条を踏まえる
Ø 合理的な返済方法(分割での返済を認める)と返済期間(複数年にわたって返済可能とする。何年が適当かについては貸付金額との関係で検討していくことが必要)に関する約定を定めておくことが必要 Ø 資格取得後、就労しながら奨学金を返済する場合、月例賃金から返済額を控除するのであれば、労働基準法第 24 条(全額払いの原則)に抵触しないような手続きが必要になる |
介護福祉士養成施設の学費に対する奨学金 注意点
公的仕組み「介護福祉士修学資金貸付制度」が利用されるケースが多いです。
この場合、入学予定または在学中の養成施設を通じて所定の申請を行うことになりますが、返還免除の条件を満たさなかった時の規定等を外国人留学生がしっかり理解したうえで申込するよう説明する必要があります。
また、各都道府県で類似する奨学金が出ており、他の奨学金との併用ができない場合もありますので、要件を確認したうえで申し込むように支援します。
介護福祉士等修学資金貸付制度(厚生労働省)
介護福祉士等として就業するため養成機関の修学資金が必要な方
介護福祉士養成施設等で修学を希望する方に対し修学資金の貸付を行います
[1]修学金(月額) 50,000円
[2]入学準備金 200,000円
[3]就職準備金 200,000円
https://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/fukusijinzai_kakuho02/dl/01_0008.pdf
返済方法
免除特約有無 | 返済方法・免除期間 |
介護福祉士修学
資金貸付制度 |
要綱等に規定されている年数で、5年間とされる事例が多く見られます。なかには、過疎地域の場合は短期間とする事例も見られるため、確認が必要 |
免除特約を満たさない場合 | 勤従事期間に達しなかった場合等でも、従事期間に応じて一部免除されることがある。返還方法など詳細は各都道府県社会福祉協議会等に確認のこと |
※介護施設等が、介護留学生を受け入れる際に、あらかじめ介護福祉士修学資金貸付制度
を受ける前提で留学してきた場合、国や都道府県、都道府県社会福祉協議会の予算の状
況などより、結果として、修学資金貸付制度が受けられない場合が生じることも想定されます。貸付制度を受けられなかったために、帰国せざるを得ないなどということがないようにしなくてはいけません。
参考資料 外国人介護人材を受け入れる介護施設職員のためのハンドブック
公益社団法人 日本介護福祉士養成施設協会
留学生に奨学金等を貸与するときに注意すべき点
「介養協調査」によると、約半数の外国人留学生が何らかの奨学金を受給しており、その
うち4割近くが介護施設・事業所からの奨学金と回答しています。介護の養成学校の学費は、外国人にとって、高額です。また、日本での生活費もかかりますので、奨学金制度は、多くの外国人留学生にとって魅力的な制度です。
ここで注意する必要があるのは、奨学金を受給した外国人留学生に対し、「学校卒業後は必ず入職すること」といった誓約書を書かせることは労働法違反となります。
ですから、「学校卒業後に当介護施設に入職し、2年以上勤務した場合、貸与した奨学金の返済は免除する」といった規定にしておくとよいでしょう。
但し、それが強制的であってはならず、他の施設に就労した場合に、奨学金の全額一括返還を求めること、途中で辞めたときの違反金や損害賠償金額を定めることなどは、労働基準法違反となる可能性が強いので、注意が必要です。
いずれにしても、介護施設等は、労働契約と奨学金等貸与契約とは明確に切り分け、当該外国人留学生の他の介護施設等での就労や退職の自由を妨げないようにしましょう。
在学中に施設でアルバイトをしてもらうことで、ミスマッチを防ぐ
専門学校在学中に、介護施設でアルバイトをしてもらうことで、採用のミスマッチを防ぐことができます。介護の基礎知識がある養成校の学生は、仕事を覚えるのが早く、体力もあります。
本人側も、座学では理解が難しい現場の実情を知ることができます。また、アルバイト期間中に、専門学校校の先生が巡回指導で施設を訪れることもありますが、学校との関係性を構築する上でも、アルバイトの受入は有効です。
なお、留学生のアルバイト採用が難しい場合、施設見学やイベントへの参加など積極的に案内することで、留学生とのつながりを持つこともできます。OB、OG 訪問を可能にするなど、養成校を通じて外国人留学生に情報が届きやすいように配慮することも大切と言えます。